恋の矢
「あ、あの・・・・・・」

 再度声をかけ、意を決して、ヨワリはそろそろと振り返った。
 そして、茫然となる。

 そこには細波一つ立てていない水面が、きらきらと光を反射しているだけ。

 慌てて周りを見回してみても、人はおろか、野鳥もいない。

「・・・・・・え? な、何?」

 再び茫然と水面を見つめ、やがてヨワリは、ため息をついた。

「・・・・・・何だよ・・・・・・。初めて『恋に落ちた』と思ったのに・・・・・・」

 恋に憧れる少年の見た幻か。
 ヨワリはがっくりと、その場にへたり込んだ。



*****おわり*****
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