僕とキミと死ぬ覚悟
「たぶんね、あの子は治療をやめることを選ぶと思うの」
顔を上げたお姉さんがそう言った。
「…僕も、そう思います。」
治療が辛いからやめたいワケじゃないと思う。
でもハルは、生より死を選ぶ。
そんな…気がした。
「あの、親御さんはどう言っているんですか?」
「ハルに任せる、って。
あの子の人生だから、って。」
ハルのお母さんは、お父さんは、ハルに生きていてほしく…ないのだろうか。
「今、冷たいな、って思った?」
「えっ…いや…そんな」
「ううん、いいの。
私も冷たいって思ってる。
けどね、やっぱり娘だから分かるの。
2人とも仕事が忙しいからって言ってハルに会おうとしない。
それは、辛いからだって、分かる。
本当は、私も会いたくない。
日に日に弱って行くあの子を見てるのは…辛すぎる。」
僕も、お姉さんと同じ気持ちだった。
ハルと血のつながりがあるわけじゃない。
でも、僕も辛かった。
寝ているのに、苦しそうに顔を歪めて、額に汗を浮かべるハルを見ているのは。
何度、変わってあげたいと思ったか分からない。
「ハヤトくん。
前はね、あなたが辛ければ会いに来なくてもいい、
そう言ったけど。
でもね、あの子が生きてる限り、会いに来てくれないかな。」
お姉さんに言われるまでもなく、
僕は初めからそのつもりだった。
だから、力強く頷いた。