僕とキミと死ぬ覚悟
「今日は柵の向こうにいないんだね」
音もなく、またも突然聞こえたその声に僕はまた、驚く。
「…キミ、結構意地悪なの?」
彼女はその言葉には答えてくれず、
僕の隣に来ると
「隣いい?」
そう言って横に座った。
それからどれくらいの時間が流れたのだろう。
辺りはもう、暗くなろうとしている。
少しずつ、家の明かりが灯っていく。
「…ねぇ、名前…聞いていい?」
「ハル」
勇気を振り絞って沈黙を破ったというのに。
それなのに…交わされた会話はこの2つだけ。
聞きたいことは山ほどある。
どこに住んでるの?
とか
何歳?
とか…
なのに、僕は何も聞けないままで。
だって彼女が…ハルが、
答えてくれる保障はどこにもないから。