赤い月 弍

心配そうに自分を見上げる瞳と重ねられた手の温もりで、嵐は呆気なく去っていく。
さりげなくその手を握れば、機嫌は急上昇。

恋する男など単純な生き物だ。


「そだねー、返しちゃ…
…え? 呪咀返し? うさぎが?
その場合、相手はどーなんの?」


「この程度の呪符なら、妾が返しても死ぬ事はあるまい。」


「…
相手確認するまで、ちょっと待とっか。」


「…そなたがそう言うなら。」


そなたがそう言うなら。
そなたがそう言うなら。
ですってよ、ちょっと奥さん!


(可愛すぎて死ねる。)


死ぬ前に殺されそうだから、言わないケド。


「おい、そこの発情小僧。」


だらしなく蕩けきった赤い顔を隠すことも忘れて、脳内花畑に旅立とうとしていた景時を呼び止めたのは、いつの間にか昇降口に立っていた秋時だ。

< 105 / 215 >

この作品をシェア

pagetop