赤い月 弍

「鬼は肉片に成り果てても、凝縮した闇。
新たな闇を呼び寄せる。
闇は寂しがりやじゃからな。」


寂しがりやて…ちょっとカワイイじゃねぇか、おい。


「それをただ置いておるだけでも闇は増殖し、災いを起こす。
さらに、闇を呼び寄せるだけではなく結合を促すような呪を施し、着物や櫛など、いつも身につけるようなものに忍ばせたとしよう。
これを長く身につけることになる者が、生まれて此の方闇など無縁の聖者でもない限り…」


「…オニになる…?」


「そう。鬼寄せは完了じゃ。
邪魔者を鬼に変えてでも葬りたい時に、使われたようじゃ。
頃合いを見計らってどこかに逃げ延びてしまえば、いずれは誰かが退治してくれようから、己の身は安泰というわけじゃな。」

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