赤い月 弍
…前言撤回。
冷静に見せているだけで、底に潜む熱は十代の若造と変わらない。
にこやかに『地獄見せる』などとのたまう坊主には、経など詠まれたくないものだ。
「…
助けるつもりなら、急ぐがよい。」
静かなはずのうさぎの声は、その場にいる三人を黙らせるほどのナニカを秘めていた。
光が消えたその瞳は、ブラックホールのようだ。
「たとえ犠牲者であったとしても、魂が闇を受け入れてしまえばそれは鬼。
滅するより他に、救うすべはない。」
瞳の中の闇黒に囚われた秋時と薫が動きを止める中、景時は伸ばした指先でうさぎの髪に触れた。
長さも色も本来の彼女のものではないが、滑らかな手触りは変わらない。
景時は手にした髪をくるくると弄びながら、臆することなく闇黒の深淵を覗きこみ、うさぎに問うた。
「そのコが心配?
うさぎも手伝ってくれる?」