赤い月 弍
閉じられたリビングドアの向こうから、言い争う声が聞こえてくる。
「や、やっぱムリ…」
「何を往生際の悪い。
女は度胸と言うではないか。」
「ソレは男だっつー…
って、アンタ、ドコにそんな力…」
勢いよくドアが開き、誰かが飛び出してきた。
後ろから蹴られでもしたのだろうか、よろけながら景時と大吾の前に立ったのは…
「祥子?」
「へ? コレ、祥子ちゃん?」
ギャルはドコへ行ったの?
バサバサ音が聞こえそうなつけ睫毛もない。
目の周りも黒くない。
唇も無駄にテカっていない。
完全ナチュラルメイク。
恥ずかしいのか、顔を赤らめ涙目になった祥子が立っていた。