赤い月 弍
景時は変わり果てた小鞠から目を逸らし、唇を噛みしめた。
顔を伏せた景時の様子を隙と捉えたのだろうか、絡み合っていたオニが飛び起き、爪をかざして踊りかかった。
長めの前髪の奥で、景時の瞳がギラリと狂暴な光を宿す。
「あぁぁぁぁぁ!!」
頬を掠める鋭い爪に怯むことなく一歩踏み込み、オニの巨躯を腰から肩に斬り上げた。
「グ…ガガッ」
斬鬼刀に浄化されて消えてゆくオニの背後に見えた、今にも跳びかかる体勢で景時を狙うもう一体のオニの胸には、華奢な白い手が生えていた。
青い炎。
跡形もなく消えるオニ。
目の前に現れる美しい鬼神。