赤い月 弍
母親が部屋の前まで運んでくれる食事にも、昨日から手をつけていない。
食べたくない。
だが空腹は感じる。
胃がキリキリ痛むほど。
食べたい。
食べたくない。
食べたイ。
ナニヲ?
…
…
ヒトヲ…
「小鞠。」
こんな自分を見ても、いつもと少しも変わらない透き通る声で名を呼んだのが誰なのか、見なくても小鞠にはわかった。
「うさギィちゃん…」
ゆっくりと顔を上げる。
本物のお姫様のように赤い着物を身に纏った憧れの人が、月光の下に立っていた。