赤い月 弍

見る間に髪と瞳が漆黒に変わり、二本の細い角が消え失せる。

弾かれたように手を伸ばした景時は、歩き出そうとする華奢な肩を強く掴み、振り返るうさぎを正面から腕の中に閉じ込めた。


「あー… えと…
挑発とか、ダメだから。
興奮すると、融合が進行するカモだから。」


「うむ。優しくしよう。」


「それから… あ。
呪で縛ンのも、ダメだから。
呪を重ねすぎると、今度はそっちが暴走しちゃうから。」


「うむ。気をつけよう。」


「後、ね… 後…」


「景時。」


うさぎが景時の胸に頬擦りするように顔を埋め、細い腕を彼の腰に回した。
そして、硬直した景時の背をそっと撫でる。


「案ずるな。
妾を信じよ。」

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