赤い月 弍

あの夜、小鞠の部屋の窓からこっそり侵入して彼女をベッドに寝かせた後、慌ててバイクを回収して家へ戻ると、うさぎはなにもなかったような涼しい顔で景時を待っていた。

汚れた着物は脱いだのだろう、いつも通りの裸Yシャツ。

いつも通りのお迎えの言葉。

いつも通り、コーヒーをブラックのまま手渡してくれた。

でも‥‥‥


「…
うさぎを、斬っちゃった…」


景時は眉をハの字にした情けない顔で、自分の両手を見つめた。


「情けねぇツラしてンなよ。」


薫が手を伸ばし、わざわざ景時の傷があるほうの頬をつねる。


「いひゃいぃ。
ひゃめて、みゃじで。」

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