赤い月 弍
今日も誰よりも早く登校。
教師や用務員のオッサンにも見つからないように、辺りを窺う。
最近、あの生意気な女は姿を見せていない。
効果が出てきたのかもしれないと思うと、笑いが止まらない。
毎朝早起きするのがキツくなってきたが、もう一息。
もう一息で、見返してやれる。
あの女の上靴の下に、憎しみ込めて作ったコレを…
「なーにしてンのかなー?」
場にそぐわない軽くて甘い声が、彼女たちを硬直させる。
昇降口の壁に腕を組んでもたれかかった景時が、欠伸をしながら頭を掻いていた。
「やーっぱ、君らだったンだ。
懲りないねー?」
「高杉…」
青ざめた顔で振り返ったのは、あの日うさぎを吊し上げようとして、手酷い返り討ちを食らった三人の女生徒だった。