赤い月 弍
薫しかいなかったはずの下駄箱の上から、祥子の声。
続いて大吾までひょっこり顔を出した。
「祥子… なんで…」
「ココ、前から登ってみたかったから?」
ハイ、答えになってマセン。
「イジメとか、フツーもう卒業だっての。
オコチャマか。
しかも最終兵器が呪いのお札とか、まじうける。
私、口軽いから、ペラっペラ喋っちゃお。
今日からダサすぎヘタレすぎで、誰にも相手にされなくなっちゃうねー?」
「俺も口軽いから、ペラっペラ喋っちゃお。
男って、女子の陰険なカンジまじドン引きすっから、誰も相手しなくなンだろねー?」
大吾と祥子は顔を見合わせてもう一度「ねー?」とハモった後、三人を見下ろしてニヤニヤ笑った。
いつも自分たちがそうして誰かを嘲笑っていたのに、完全に立場が逆転してしまった。
不安と悔しさに、彼女たちは口を噤んだ。