赤い月 弍
小鞠の隣をすり抜ける時、うさぎを庇った彼女をぶった女生徒が、涙目で睨みながら低く呟いた。
「覚えてろよ、桜木。」
小鞠は素早く女生徒の手首を掴んだ。
もう怯えない。
もう怖くない。
「アナタも覚えといて。
私はもう、泣き寝入りなんてしないから。」
女生徒が大きく目を見開いて、小鞠を見た。
薫が短く口笛を吹く。
祥子は、小鞠カッケーと手を叩く。
いつも気弱そうに俯いていた小鞠は、もういなかった。
逃げる足音を背中で聞きながら、景時は隣にいる小鞠の頭に軽く手を置いて微笑んだ。
「許しちゃって、ほんとに良かったの?」
「いいの。」
「…
そっかぁ。
頑張ったね、小鞠ちゃん。」
「ううん。
まだまだこれからなんだから。」