赤い月 弍

頭に直接、植えつけられているようだ。

胸に直接、刃物で刻まれているようだ。

ただ、そこに座っているだけなのに。

ただ、話しているだけなのに。


「忘れるな。
妾は鬼じゃ。」


(知ってるよ。)


恐怖を与え、突き放すような言葉を吐きながら、今ならまだ引き返せると促す、強く、恐ろしく、そして…優しい優しい鬼。

だから…

身も凍る鬼気を受け入れ、纏わりつかせたまま、景時は穏やかに微笑んだ。


「なら俺は、君を失わずにすむ選択肢を選ぶよ。
何度でも。」

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