赤い月 弍

うさぎの深紅の瞳と、景時の日本人にしては色素の薄い茶褐色の瞳は、まっすぐに互いを捕らえたまま動かずにいた。

沈黙の後、長い睫毛を伏せたのはうさぎだった。

鬼気が消滅し、緊張から解かれた躰から力が抜け、ついでに気も抜ける。


「薫、腹が減ったと言ったか?」


重圧が消えたうさぎの声に、景時の腹の虫もグーと空腹を主張した。


「ハハ。 俺もだわ。」


「そろそろ昼ではないか?
妾が何か作ってやろう。」


「「メシ、作れんの?!」」


勢いよく景時と薫がハモった。

驚きと共に不安もよぎる。
果たしてソレは、人間も食べられるんデスカ?


「馬鹿にするでない。
これでも、人の赤子を育てた事もあるのじゃぞ。」


ふふん、とうさぎが胸を張る。

そして立ち上がり、ラグに座ったままうさぎを見上げる景時に手を差し出した。

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