赤い月 弍
(俺は騙されない。
ちょっと顔がイイだけの、ペテン師共め。)
佐々木は、理事長室に向かう廊下を先導する秋時の背中を睨みつけた。
「そーんな殺気立たないで。
今から紹介するから。」
途端に秋時が振り返り、苦笑しながら言う。
佐々木は慌てて中庭が広がる窓の外に視線を移した。
妙に勘が働くところも、気に入らない。
考えを見透かされているような気がする。
(今、俺が考えてることも、わかってやがンのかな。)
それならそれでいい、と佐々木はほくそ笑んだ。
例の『特別な生徒』は、秋時がどこかから預かったとんでもない不良か、多額の寄付金付きの世間知らずのボンボンに違いない。
ビシバシ、シゴき…いや指導し、教師の怖さを教えてやる。
ある意味、特別待遇だ。
そして秋時のニヤけた顔に、泥を塗ってやる…