赤い月 弍

うさぎがストローに口をつけるのを、二人は見守る。


「ん…
旨い…」


小さな呟き。
嬉しそうに綻んだ口元…

またも被害者が出た。

至近距離で食らった祥子と小鞠は、同性とわかっていながら耳まで赤くなってフリーズした。

ほどよい距離を保っていたはずの大吾まで、手で鼻と口元を覆って「鼻血が、鼻血が、」と呻いている。

危険だ…

景時は疾風の如く動いた。
学校では見せない動き。

オニ狩りの動き…

瞬く間にうさぎに迫り、その細い腰を抱いて立ち上がらせ、素早く腕の中に閉じ込める。


「見んな! 俺ンだ!
うさぎは笑うな!」


「何故じゃ?
…まず、放せ。」


「いーやーだー
俺ンだー!」


「イヤがってンじゃん、放せ、このヘンタイ!
そんなカワイー生き物、一人占めしてんじゃねーよ!」


フリーズ状態が解除された祥子は、うさぎを抱きしめたまま赤い頭を振ってイヤイヤする景時に、食ってかかる。

小鞠は未だピクリとも動かない。

< 55 / 215 >

この作品をシェア

pagetop