赤い月 弍
うさぎがストローに口をつけるのを、二人は見守る。
「ん…
旨い…」
小さな呟き。
嬉しそうに綻んだ口元…
またも被害者が出た。
至近距離で食らった祥子と小鞠は、同性とわかっていながら耳まで赤くなってフリーズした。
ほどよい距離を保っていたはずの大吾まで、手で鼻と口元を覆って「鼻血が、鼻血が、」と呻いている。
危険だ…
景時は疾風の如く動いた。
学校では見せない動き。
オニ狩りの動き…
瞬く間にうさぎに迫り、その細い腰を抱いて立ち上がらせ、素早く腕の中に閉じ込める。
「見んな! 俺ンだ!
うさぎは笑うな!」
「何故じゃ?
…まず、放せ。」
「いーやーだー
俺ンだー!」
「イヤがってンじゃん、放せ、このヘンタイ!
そんなカワイー生き物、一人占めしてんじゃねーよ!」
フリーズ状態が解除された祥子は、うさぎを抱きしめたまま赤い頭を振ってイヤイヤする景時に、食ってかかる。
小鞠は未だピクリとも動かない。