赤い月 弍
うさぎは顔を上げてくれない。
コッチを見て。
俺を見て?
もう誰にもこんなコトさせないから。
守るから…
景時は胸元に縋りついたまま口を開けてポカンとしている女に、視線を戻した。
その顔はいつもの景時とは別人のように、酷薄に見えた。
「だから、次は許さない。
うさぎになんかしたら、俺、女の子でも手加減できねぇから。」
初めて聞いたきつい口調と冷たい声に脅えたように、三つの足音が逃げていく。
景時は、うさぎと小鞠に駆け寄った。
「ごめん、うさぎ。
大丈…」
「状況をよく見ろ、阿呆。
大丈夫でないのは、妾ではなく小鞠じゃ。」