赤い月 弍
「じゃ、サクっと行ってくるわ。」
「待て、景時。
…小鞠。」
うさぎが厳しい声で小鞠を呼んだ。
小鞠の体がビクリと強張るのが、景時の腕に伝わってくる。
「わかったであろう?
妾は強い。身も心も。
だからもう二度と、妾の盾になろうなどと愚かな真似をするでない。
そなたはか弱き娘。
妾の後ろに隠れておるくらいで丁度良いのじゃ。」
「あ… ごめ…
私、余計なコト…」
「だが… ありがとう。」
うさぎの冷たい手が、景時の腕の中で俯いていた小鞠の手を取った。
「そなたの献身決して忘れぬ。
そして、そなたが助けを求める時あらば、必ず妾が力になろう。」
うさぎの紅く妖艶な唇が、小鞠の指に軽く押し当てられた。
顔を上げたうさぎは、穏やかで優しい聖母のような微笑みを見せた。