赤い月 弍
きっと それも 嘘
思っていたより時間がかかった。
病院で治療を終えた小鞠を家まで送り届け、法定速度をブっちぎって景時が帰り着くと、うさぎは薄暗くなった部屋の窓際に立ち、外を見ていた。
紫と藍色のグラデーションが美しい空には、まだぼんやりとした月が浮かんでいる。
とりあえず、三行半の手紙一枚で、出て行かれることはなかったようだ。
「ただいま。
小鞠ちゃんの足、骨には異常ないって。
ご両親にも説明して、ちゃんと謝ってきた。
…
ごめん。
俺のせいで…」
「そなたの責任ではあるまい。」
リビングのドアの前から一歩も動けず立ち尽くしたままの景時に、うさぎは鷹揚に声をかけたが、まだ顔を見せてくれない。