赤い月 弍

(『そなた』って、誰?)


喉まで出かかった問いを、奥歯を噛みしめて押し殺す。

知りたいけど、知りたくない。
知るのが怖い。

俺は優しくなんかない。
俺は臆病でズルいンだよ。

俺は、『そなた』じゃない…

だから…


「俺の傍にいろよ。
俺ならそんな顔させないから。
君を守るから。
ちゃんと俺を見ろよ…」


日が落ちる。
うさぎの銀の髪だけが、微かな光を放つ。

このまま溶けあって、離れることなどできなくなればいい…


「無理じゃな。」

< 96 / 215 >

この作品をシェア

pagetop