夜籠もりの下弦は恋を知る

「駄目だ!火の勢いが止まらぬ!!」

「あそこには立て篭(コ)もっている女子供が大勢いるのだぞ!?」



これには敵も味方も呆然となり、騒然となった。

当の重衡でさえも、これは予想外の出来事だった。


「そん、な……私の…せい…で…?」

震える声。


重衡は青ざめた顔で燃え盛る東大寺を凝視した。


「私は………!」


拳を握り、唇を噛み締める。

身体がわななく。



「うわああああぁぁ!!!!!!!!!!!!」


絶叫を響かせながら、彼はまだ降伏しない暴徒たちに向かって馬を走らせた。










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