夜籠もりの下弦は恋を知る
数日後。
重衡が無事、勝利を収めて帰還したとの知らせを受けた輔子は、屋敷の中で喜びを噛み締めていた。
(良かった…。重衡様がご無事で…)
激戦になったと聞いた。
南都である奈良は大火にみまわれ、多くの死人がでたらしい。
(それでも、重衡様さえご無事なら…)
それでいいと思ってしまう。
浅ましい自分。
そんな汚い心の裏側をそっと胸の奥に押しやり、輔子は乱世により亡くなった命を弔うため、神仏に祈りを捧げた。