夜籠もりの下弦は恋を知る
――私は前世、中納言局として知られていたわ
前世の不安や嫉妬が甦る。
(いや…!)
自分の醜い心を追い払うようにきつく目を閉じた。
それが悪かったようだ。
「あー!!潤のアホー!!」
サーブをキメるはずが、一瞬の心の動揺により、からぶった。
潤の拳はボールを打つことなく空気を殴り、ボールは虚しく床に落ちていく。
「らしくないよ~!潤がサーブミスするなんて」
「あ…ゴ、ゴメン…」
リーダーにお説教されていると揚羽が近寄ってきた。
「どうしたの?上の空って感じだね」
「うん…」
「昨日のあの子が気になるの?」
ズバリ聞いてくる友人に苦笑しつつ頷く。
「だよねー。アタシも気になるわ~。幼なじみとか言ってたけど、なーんか臭くてね」