夜籠もりの下弦は恋を知る


 たまには一人で帰るのも悪くない。

掃除当番の揚羽に手を振ってから校舎を出る。

(はあ~…やっぱり重衡さんに聞こうかな…)

のんびり歩きながら、彩音について彼に直接尋ねようか悩む。

(でもな、嫉妬してるの…知られたくない…)

校門の外へ出て、右に曲がろうとした時だった。


「潤さん?」


甘い女性の声。

潤はピタリと足を止めた。


「こんにちは」


今、一番会いたくない人物がそこにいた。

「あ、やね…さん…?」

「ちょっといいかしら?話がしたくて」


(ひえええ!!私は話すことなんてないよぉー!!!!)


ダッシュで逃げ出したい衝動を抑えつつ、「いいですよ」なんて口で言う。

「それじゃあ、行きましょうか。私、パフェが安くておいしいお店知ってるの」

笑顔の彩音に逆らえるわけがない。


(はう~…長くなるのかな…?)


潤は緊張しながら彩音の後についていった。









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