夜籠もりの下弦は恋を知る


 学校から歩いて数分。

意外と近くにその店はあった。



「いらっしゃいませ~って、彩音ちゃんと…潤さん!?」

少し大人向けのシックなお店の中に入って早々、見たことある顔に出会った。

「あれ…?宗盛、さん…?」

カウンターに立っている店員はどう見ても重衡の兄である宗盛だ。


(てことは…ここって重衡さんのバイト先!!?)


ひじょ~に帰りたい。

帰って布団かぶって寝たい。

潤の頭の中の声がそう叫んでいるが、そんなこと許されるわけがない。


「宗盛さん、今日も安くしてね」

「はいはい。彩音ちゃんは常連さんだからね。潤さんも初めてだし、半額にしてあげるね」

「あ、ありがとうございます…」

今日はバイトと言っていたが、まだ店内に重衡の姿は見当たらない。


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