夜籠もりの下弦は恋を知る

(来る前に出たい…!)

奥の方の席に座りながら、切実に思った。

「相変わらず、あんまりお客さんいないね~」

「う…彩音ちゃんに言われるとぐさっとくるね」

宗盛さんがメニューを置きながら苦笑い。

「私はいつものパフェで。潤さんも同じやつでいい?私のオススメ」

せっかく置いてくれたメニューも見ずにさっさと注文する彩音。

「あ、はい」


(もう、何でもいいです…はい…)

どうせこの妙な緊張のせいで味なんてよくわからないだろう。

「はい、では少々お待ち下さい」

そう言って宗盛さんは厨房に引っ込んでいった。


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