夜籠もりの下弦は恋を知る


少しの沈黙。

それから、おもむろに彩音が口を開いた。



「はっきり言わせてもらうけど…私、しーちゃんのこと好きよ」


ドクン、と大きく胸が鳴った。

潤は彩音の顔から目線をそらし、何を言おうか迷う。


「貴女が前世、彼の妻だったなんて関係ない。私は絶対にしーちゃんと結婚する。…今度こそ、私が彼の妻になるから」


(何を…何を言い返せばいいの…?)


困惑する気持ちを落ち着かせようと、軽く息を吐く。


「この現代でなら、しーちゃんの子供だってちゃんと名乗らせてあげられるし」


(………え?)


「あ、の…今の、どういう意味ですか…?」


彩音がニヤリと笑う。

嫌な予感しかしない。


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