夜籠もりの下弦は恋を知る
「私、前世で彼の子供を産んだのよ。息子だったわ。正妻の貴女に子供がいないから悪いと思って隠し通したけれど…」
「そ…んな…」
驚愕。
それ以外、表現しようがない。
(子供…?中納言局と重衡さんの間に…子供、が…?)
「そんな!!嘘よ!!」
思わず大声を上げていた。
「嘘じゃないわ」
「だって、重衡さんは何も…」
「私が彼の重荷になるようなこと言うわけないでしょう?側室ですらない単なる一夜の浮気相手に子供ができました、なんて…世間には、もちろんしーちゃんにもひた隠しにして育てたわ」
彩音はどこか得意そうな表情を見せた。
(そんな…!私がずっと望んでも手に入らなかったものを、この人はもっていたの…!?)
口や態度にはあまり出したことはなかったが、潤は前世、なかなか子ができないことにひどく悩まされていた。
(正妻として、私が重衡さんに…与えてあげたかった…。それなのに…)
「だからね、この事実を告げれば…彼は私のことを蔑ろになんてできない」