夜籠もりの下弦は恋を知る
ようするに、彼女が言いたいことは…
「しーちゃんは貴女じゃなく、私を選ぶ可能性だってあるのよ」
確かに、前世が妻だったからといってまた潤を選んでくれるなんて保証はどこにもない。
浮かれるな。
彼女はそう言いたいのだろう。
しかし、潤は彩音の言葉など聞いてはいなかった。
(私が欲しかったものを、この人はもっていた…)
膝の上で手をきつく握り締める。
(私が欲しかったものを……)
切望しても得られなかった夫との子供。
潤の心に黒い感情が渦巻く。
「お待たせしました」
突如、頭上で聞き慣れた声がした。
「しーちゃん!」
「え…」
そこにはエプロンをつけた重衡が立っていた。
「はい、注文のパフェ」
おいしそうなイチゴパフェを二人分テーブルに置いていく。