夜籠もりの下弦は恋を知る

「潤さんが来てくれるなんて、嬉しいですね」

重衡は今までの会話を聞いていなかったらしい。

何の躊躇いもなく潤に話し掛けてきた。

「バイトって、ウェイターだったんだ」

潤は当たり障りのない話題を返した。

「俺はウェイターはしてません。普段、皿を洗うのが仕事なんですが…貴女がいたので運んできました」

綺麗な微笑みを浮かべる。

潤だけに。


それが気にくわなかったらしい。

彩音が無理矢理二人の会話に入ってきた。


「しーちゃん、私ねしーちゃんに話があるの。前世のことなんだけど…」

この流れからして、重衡は彩音の前世が中納言局だと知っているようだ。


(何を言うつもり…?)


潤の胸が不安で高鳴った。


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