夜籠もりの下弦は恋を知る
「ほう、そちらが重衡の…。確か名前は…」
「前世は藤原輔子(フジワラノスケコ)といいましたが、今は藤沢潤といいます」
勝手に自己紹介を済ませられた。
とりあえず、流されっぱなしは嫌なので、自分からも挨拶をしておく。
「初めまして。藤沢潤です」
「おお!そうだそうだ!邦綱(クニツナ)殿の娘だったな」
(は…?くに、つな?)
自分の父親はそんな名前じゃない、とは思ったが、ややこしくなるのは避けたい。
ここでもだんまりを決め込んだ潤だった。
(それにしてもこのお父さん、お世辞にも若いとはいえないのに金髪かぁ~)
ワイルド感タップリだ。
「積もる話もあろう。さあ、こちらへ」
促されるままに奥へ進む。