夜籠もりの下弦は恋を知る
「そんなの、貴方のせいじゃない!!!!」
叩かれた頬が赤くなる。
けれど重衡は頬の痛みより、潤の言葉と涙に動揺した。
「俺の、せい…?」
涙目になってきつく睨んでくる潤を呆然と見つめながら、うわごとのように繰り返す。
「俺の…?」
彼の力が緩んだ。
すかさず腕を引きはがす。
「ぁ…!潤さ…」
重衡からするりと逃れ、再び背を向ける彼女。
泣き出しそうな表情で駆けてゆく潤を追うことなど、この時の彼にはできなかった。