夜籠もりの下弦は恋を知る
居間に通されて茶と煎餅を勧められ、遠慮なくパリパリ食べていると重衡の父が突拍子もない話題を提供してきた。
「わしは前世を平清盛という」
「ゲフッゴフッ…!!」
(な、何言ってんだこのお父さん!ヤバい!思わずお茶吹いちゃったよ…!)
「清盛って…あれですか?よく日本史の教科書にでてくるあの平家?」
冗談程度に受け止めて尋ねてみると…。
「その通り!」
堂々と同意されてしまった。
「わしは生まれながらに前世の記憶を持っていてな、この平野一族に生まれ変わってもなお、我が全盛期であった平氏一族のことが忘れられず、子供たちにも前世と同じ名前をつけたんじゃ」
「は、はぁ~…」
曖昧な返事をしながら潤は話を理解しようと努めた。