夜籠もりの下弦は恋を知る
「我が身こそ あかしの浦に たびねせめ おなじ浪(ナミ)にも やどる月かな…」
屋島に来てから二度の合戦があった。
どちらも平家が優勢で勝利をおさめたが、それも束の間の出来事であった。
一の谷の戦い。
この合戦で、重衡は源氏側に生け捕りにされてしまった。
この知らせを受け、輔子がどれほど絶望的な思いを味わったことか。
(重衡様…私は今宵、明石の浦に旅寝いたします。その同じ浦の波に、月も共に宿っておりますよ…)
壇ノ浦の戦い。
これにて平家一門は滅亡。
そう言われるほど、酷い戦となった。
次々と一門の人々が海に命を投げゆく中、輔子は女だからという理由で敵兵に助けられ、今は京へ向かう途中だ。