夜籠もりの下弦は恋を知る
さて、結果からいうと、潤の「ダッシュで逃げ帰ろう作戦」は失敗に終わった。
「あ、あの~帰ってもいいでしょうか…?」
「ダメです」
現在、重衡の自宅にお邪魔している潤。
別に来たかったわけじゃない。
本当に。
教室をいち早く脱出した先で待ち伏せしていた彼に、揚羽と一緒に捕獲されただけのことだ。
「潤さんはここで待っていて下さい。くれぐれも逃亡しないように。…さ、貴女はこっちへ」
重衡は自分の部屋に潤を押し込むと、揚羽を他の部屋へ案内した。
「ちょっと!アタシをどこに連れてくき?」
二人で平野家の廊下を移動しながら、揚羽は文句ありという態度で尋ねた。
「貴女に会いたがっている奴がいてね」
「へ?アタシに?」