夜籠もりの下弦は恋を知る
「お待たせしました」
襖を開けて中に入ると、潤は部屋の真ん中に置いてあったクッションの上に座っていた。
「揚羽は?」
友人の安否を尋ねる心境で問い掛ける。
「維盛の部屋です」
「何で?」
純粋にわからないといった表情を重衡に向ける。
「彼女は前世、維盛の北の方ですよ」
「え…ええぇえ!!!?」
どうやら、衝撃的だったらしい。
「嘘!?揚羽が!?」
「この前ここに来た時、維盛が気づいたそうです」
「うわ~!維盛さん、良かったね!」
さっきまでずっとブスくれていた潤がとたんに笑顔になった。
「ですが…本人はあまり会いたくなかったようです」
「え?どうして…」
重衡は潤の隣に腰をおろすと、維盛について語り出した。