夜籠もりの下弦は恋を知る

「愛しているからこその心遣いです」

「…そっか…そういう思いも、あったんだね…」


(でも、私なら連れていってほしいと泣きつくかも…。子供もいるのに旦那さんと離れ離れになるのは…心細いよ)

渋ることなく傍にいていいと言ってくれた重衡に、心の中で感謝する。


「…それから維盛は、死ぬ前に北の方に会おうとしたけれど叶わず、一門からも離れ一人でひっそりと入水(ジュスイ)しました。何の連絡もできず家族を残して命を絶ったこと…すごく後悔しているらしく…もし北の方の生まれ変わりに出会っても、あわせる顔がないと…」

どうやらこれが、揚羽に会いたくなかった大きい理由のようだ。

「でも…今、会ってるんだよね?」

「はい。昨夜、決心したそうです。面と向かって、ちゃんと謝ろうと」


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