夜籠もりの下弦は恋を知る


 翌日、輔子は亡骸(ナキガラ)を取り寄せて供養しようと奈良へ人をやった。

探しても首はなかったが、身体は捨てられていたので、使いの者はそれだけを日野に運び届けた。



「嗚呼…重衡様…!!」

首がなくても、わかった。

自分が昨日着させた衣が、彼であるという何よりの証拠。


「…無念で、ございます…重衡様…」


もっと、彼と生きたかった。

そんな思いが胸に込み上げてきて、目から水滴となって形を成す。


「弔いましょうぞ…貴方様の、安らかな旅路を…」

無惨な亡骸の傍らで、静かに泣く輔子。





この時刻、西の空では下弦の月がゆっくりと沈もうとしていた。











< 167 / 173 >

この作品をシェア

pagetop