夜籠もりの下弦は恋を知る
「帰ったか、知盛(トモモリ)」
自称清盛が新たに登場した息子の名前を呼んだ。
(!?知、盛…!?)
潤の脳がその名に反応する。
「た、助けて知盛さ…!」
重衡の胸を力いっぱい押しながら、彼女は救世主にSOSを知らせようと躍起になった。
「重衡、何やって…まさか、佐殿(スケドノ)!?」
知盛は潤の存在に感づくと、急いで弟から潤を引きはがした。
「兄さん、俺たちの愛の営みを邪魔しないで下さい…!」
「お前はいつもいつも佐殿の気持ちを無視する。明らかに嫌がっていただろう?」
「ケホッ…ありがとうございます、知盛さん」
潤は息を整えながら重衡の兄、知盛を見た。
「礼はいい。しかし…現世でも苦労するな。だから俺の側室になっていれば良かったものを」