夜籠もりの下弦は恋を知る
「え?側室?」
知盛は低く喉で笑うと、潤の頬を撫でた。
「前世で俺は、重衡に泣かされるお前をよく慰めてやっていた。思い出さないか?」
「……………」
しばし考える。
(待てよ…私、さっき知盛さんの名前にめちゃめちゃ反応したの覚えてる。彼の名前を聞いて安心したっていうか…落ち着いたっていうか…)
「思い、出さないか…?」
知盛の顔が間近に寄ってきて、思わず顔を赤らめてしまった。
(無駄に顔が良いから罪だよ!)
前世の夫とかいう重衡よりも、知盛のかっこよさに惚れてしまいそうになる。
「兄さん、潤さんから離れて下さい」
静かに文句を言う弟を無視して、知盛は言った。
「佐殿、重衡はやめておけ。今もプレーボーイっぷりは変わらず健在だから、またお前が泣くことになる」