夜籠もりの下弦は恋を知る
(あの方と言葉を交えてみたかった。また機会はあるだろうか…)
指で女の白い素肌をなぞりながら、繊細な愛撫を繰り返す。
「あ…しげ、ひら様…!」
女が啼く。
(あの方に触れたら、どんな声が響くのでしょう…)
ゆっくりと、焦らすように指先で女体を愛(メ)で、奏でる。
「しげひらさまぁ…」
女からの口づけ。
甘く上品だけれども、心動かされはしない。
(あの方に口づけたら、どんな味がするのでしょう…)
「しげひら、さま…?」
どこか、心ここにあらずの重衡の心理に感づいたようだ。
女房は何か言葉を発したけれど、重衡には届いていなかった。
(あの方と肌を重ねることができたなら…)
熱き猛りで一思いに、女房の中を貫く。
――どれほど心満たされるのでしょう…