夜籠もりの下弦は恋を知る
(清盛様と、ご対面…!)
恐さ半分、嬉しさ半分といった心境だろうか。
(父上、私の悪口を清盛様におっしゃってないかしら!?ああ、何の話題をあげれば…!いえ、それよりも一首歌を詠(ヨ)めとか言われた暁には…!!)
確実に、恥を晒すこと請け合いだ。
歌を詠むのが何よりも誰よりも下手だと自負している輔子。
(あ、会いたくない…!!)
嬉しさよりも恐怖が勝った。
「到着致しました」
お付きの女房が目的地に着いたことを知らせてくる。
「はい…」
(ふあああ!!降りたくないですー!!)
心の声を冷静に隠しながらしずしずと歩き、屋敷の中へ親子そろって案内された。