夜籠もりの下弦は恋を知る
「側室でも構わぬぞ」
「…相変わらず、父上はしたたかでいらっしゃる。そう言われると…良からぬことを考えてしまいそうになりますよ」
知盛は輔子がいる几帳に向かって意味深な流し目を送った。
(ひうっ…!!なぜでしょう!?捕って食べられそうな悪寒が!!)
だんまりになってしまった輔子。
「フッ…奥ゆかしい。この分では我ら平家一門でなくとも、貰い手は数多でしょうに…」
「邦綱殿の娘御であらせられるからな。だが、我が平家に嫁いでも釣り合いがとれよう」
「では、父上のご要望通り、私の側室に…」
知盛がちゃっかりと自分のもの宣言をしようとした時だった。
「父上!!」
どこに潜んでいたのか、突如重衡が現れた。
「彼女はこの私、重衡が娶ります!!」
「え…!?」
輔子は思わず几帳ごしから顔を覗かせ、驚きの表情で重衡を見つめてしまった。