夜籠もりの下弦は恋を知る
「おお、重衡。よう来たな。確かにお前でも異存はないが…知盛、どうじゃ?」
清盛から意見を求められ、知盛は穏やかに微笑した。
「…そうですね。私の側室としてよりも、まだ正室のいない重衡に嫁した方が自然でしょう」
「兄上のおっしゃる通りです。私は彼女を、重衡の北の方(正室)としてお迎えいたしとうございます」
この重衡の言葉に、慌てて几帳の陰に隠れ頬をほんのり赤らめる。
(なんて直球な方なの!!)
「私の北の方になって下さいますね」
重衡が几帳に近寄り、輔子に語りかけた。
「は…はい!」
動揺して少し声が裏返る。
「私、藤原輔子は重衡様の妻となります」
輔子は深々とお辞儀をしながら思った。
(この方は私に文を下さった、あの重衡様…!?ずっとお断りするつもりで返事を出さなかったのに…!)
彼が親が望む結婚相手というのなら、もう袖にする必要などない。