夜籠もりの下弦は恋を知る
「あ、あの…貴方、どちら様…?」
潤はやっとそれだけ言うことができた。
(てか離れろ~!)
ちょっともがいてみる。
が、無意味だった。
「おや、夫の顔を忘れましたか?重衡(シゲヒラ)ですよ」
「はい!?お、おお夫!?」
「そうです」
ニッコリ笑顔が迫ってくる。
「誰が?誰の?」
「俺が、貴女の」
完璧な微笑みで非常識なことを言ってのけた彼に、潤は心の中で絶叫した。
(嘘だーー!!!!)
「…またつぎの世でおめにかかりましょう」
「!?そのセリフ…!」
夢の中の「彼」の言葉。
「やはり、貴女は俺の…」
あごを優しく掴まれ、無理矢理目線を合わせられる。
「北の方…」
彼が言い終わるか終わらないうちに、二人の唇が重なった。