夜籠もりの下弦は恋を知る
「うちの父さんは宴会好きだからね」
初めて耳にする可愛らしい声が響いた。
「あら、徳子(トクコ)」
潤の後ろに、平野家の長女、徳子が立っていた。
「重衡の恋人さんだね。私は徳子。今日の宴会の主役は貴女でしょ?私が手伝うわ!」
「そうね。手伝ってあげなさい」
やる気満々の徳子に母親もうんうん頷く。
(え?手伝うって、何を…?)
わけがわからず潤が戸惑っていると、それを察した重衡が教えてくれた。
「うちは皆、宴会するなら着物に着替えるのがお決まりで、その手伝いですよ」
「着物!?私、着物なんて持ってないよ!?」
「大丈夫!私の貸してあげるから。ほら部屋行こう~」
潤は徳子になかば引きずられるようにして、部屋を移動したのだった。