夜籠もりの下弦は恋を知る


 たわいもない話をしながら、作業は進み…。

数分後、徳子の手際のよさにより、潤の着付けは終了した。

「うわあ…!すごい!完璧ですね!」

「フフッ、昔からやってたから、着付けだけは得意なの!」

(にしても、やっぱり帯は苦しいな…!)

潤は自分の黄色の帯を恨めしそうに見ながら、「これじゃ夕飯ガッツリ食べれないよ」と心の中でぼやいた。

「さ!一足先に大広間に行っててちょうだい。私もすぐ着替えて行くから」

「えと…大広間はどちらに…?」

「この部屋を出て、右に真っ直ぐよ。突き当たった襖(フスマ)の部屋がそう」

簡単な道筋なため、潤は着付けの礼を言ってから徳子の部屋を出た。








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