夜籠もりの下弦は恋を知る


 大広間。

座敷であるそこは、長方形の長いテーブルが真ん中に置かれ、その上に今夜のごちそうがところ狭しと並べられている。

「こんばんは。私は知盛の妻、麗花(レイカ)よ」

すでに一人、人がいた。

「どうも、潤です」

自己紹介をしながら潤は麗花に見惚れた。

(うわ~美人だ。美人がここに!)

「聞いてるわよ~。重衡さんの妻というと、前世は大納言佐殿ね!私は治部卿局(ジブキョウノツボネ)と呼ばれていたわ。覚えてない?」

「あ~すみません…。まだ記憶があやふやで…」

苦笑いをする潤に麗花も「そうよね」と頷いた。

「私も最初の頃は頭の中がグルグルしてた。でも、知盛がゆっくり思い出せばいいって言ってくれたの。…彼は前世と同じように私を大切にしてくれるから、少しずつ整理ができたわ」

上品な微笑がよく似合う。

潤は麗花を見て、そう思った。


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